男のレイン・コート 2
ここで、一つだけ言い添えておきたいのは、両者の細部の相違について。
これは、結局思想の相違ということであって、どちらが優れていてどちらが格が上かなどといった話とは、ほとんど関係がないということです。
実際、どちらも相応に優れているわけで、これに甲乙はつけがたいですね。
すでにご存知かもしれませんが、前者の「21型」は、かのキッチナー元帥の愛用になったもの。
後者の「G9型」は、あのウィンストン・チャーチルの愛用になったものです。
前者はまた「蛮カラ風」をなんとなく感じさせるものであり、後者は「粋好み」をなんとなく感じさせるものです。
さらに前者をジーンズにたとえれば、かの「リーヴァイス」のファイヴ・ポケット・ジーンズということになり、後者はたぶん「リー」のそれということになるでしょう。
両者の比較はしたがって、よし悪しの問題というよりは、ほとんど好き嫌いの問題となるわけで、主観に属する問題となるわけです。
私がトレンチ・コートというものに初めて意識的な関心を向けるようになったのは、たしかジャン・ギャバン主演のフランス製ギャング映画、『筋金を入れろ』(1955年)あたりからではなかったかと思います。
・・・その中で、初老のジャン・ギャバンが、フランネルかなにかのスーツの上に、いかにも着古した、といった風なトレンチ・コートを無造作に着て登場するのですが、その着こなしがあまりに見事だったのです。
それで、ずいぶん前に観た映画にもかかわらず、私はいまだによく憶えているのです。