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時を選ばずに歯磨き

昭和61年、ロッテは機能性ガムを発売しました。

ロッテがモニターに『あなたはガムにどんな機能性を求めていますか』というアンケートをとったところ、『ガムはもともと、噛んでいるとロの中がすっきりするものだから、もっとその機能に特化したガムはどうか』という意見が多かったそうです。

そこで出たのがノータイム。

美しい歯のためのムタステイン、虫歯にならない甘味料パラチノースを配合しています。

クロロフィルはマスキング作用、フラボノイドは中和、分解作用によるすぐれた作用があります。

通常の板ガムは重量が3・2グラムしかないのですが、それでは噛んだ場合に充分に歯を被覆して、歯磨き効果を得ることができません。

そこで『ノータイム』は体積を大きくして、キューブ状の4・85グラムにしたのです。

日大の歯学部の学生に何日か歯を磨かせず、その後にノータイムを食べさせてきれいになる実証も得ました。

今でこそ、毎日歯磨きする人は多いですが、発売当時のサラリーマンやOLは朝早くに時間がなく、歯磨きに充分な時間を取れない人が多かったのです。

そういう人にはノータイムをロに含んでもらい、それこそノータイム、どこでも時間や場所を選ばずに歯をきれいにすることを狙いました。

思いがけないことですが、「阪神大震災の時に、水がないのでこのノータイムが役立ったことがあるんです」といいます(ロッテ広報室)。

現代人に噛む力を!


子どもたちが食事時にあまり噛まなくなったことは、調査によっても判明しています。

現代の食生活は、食品の加工技術の進歩によって食物本来の特性を失い軟食化する傾向にあります。

噛むことの効用は顎や頭蓋を正常に発達させることとともに老化防止、思考力の向上など多岐方面にわたっています。

噛む力が低下するとアゴや歯茎が弱くなり、歯並びも悪くなるばかりでなく健康にもよくないのです。

また、東京医科歯科大学の研究では、「チューインガムを噛むトレーニングで噛む力が3ヶ月で2倍になった」ことが報告されています。

そのため、ロッテのもとに研究者や主婦たちから噛むトレーニングガムの開発の要望が寄せられたといいます。

そこでガムの噛みごこちを長持ちさせ、咀嚇力を向上させる「ガムズ」を昭和63年に発売。

噛むカをトレーニングするガムで、従来の硬さの2倍。

ロッテ独自の技術開発力によって初めて完成したガムベースを使用しています。

バブル時代のリラックス

ガムを噛む時の目的の一つとして、「リラックスすること」があります。

緊張状態を解くために大リーガーやパイロットがガムを噛むことをヒントに、ロッテ中央研究所ではストレス社会に生きる現代人に対し、α波のリラックス作用をクイック&ロングに発揮するガムを開発することになりました。

興奮したり注意力を集中したりすると、頭の中にβ(ベータ)波がでます。

昼間仕事している時がこの状態です。

これに対し、精神的に安定しリラックスするとα波という脳波が多くなります。

ストレスを解消するためには、このα波をいかに多く引き出してやるかがポイントなのです。

ラベンダーの香りが情緒を安定させるといわれるのでこれを配合し、また、漢方の世界ではカノコ草が沈静効果が高いといわれていました。

薬品をガムに使うことはできないですが、漢方ならできるので、これも配合し、より機能性を高めました。

味の基本は『ロブ』と同じで森の香でしたが、これは嗜好が二分化されます。

そこで嗜好性をもうすこし引き上げようと途中で味を変えました。

これが出たのがあたかもバブル経済のまっただ中。

味が受け入れられなかったせいか、ある時から味がまろやかに変わったのを覚えています。

同年、アセロラガムも発売。

ガムは常に新しいものを導入しないと飽きられます。

アセロラも、それ自体は酸っぱくて食べられませんが飲料などに利用されていました。

これも希少性があるということで、またビタミンが豊富でヘルシー志向とマッチしたことからアセロラガムが誕生したのだそうです。

女子高生が作ったマスカットガム

平成4年当時のチューインガム界では、各社から機能性を追求したガムが次々に発売されていました。

ある日ロッテがモニターを集めて会議を開いたところ、1人のオピニオンリーダー的な女子高校生が『ガムってほんとはおいしくって愉しいものでしょ』といったそうです。

この発言のメモが残り、ではロッテにはなにがあるか、ブルーベリーもそうだが、その他には?と考えたのがマスカットガムだったそうです。

確かに果物ガム単品として、マスカットにはファッション性はあるだろう、そしてお金持ちでもない限り希少性もまああるだろうということになりましたが、果たしてブルーベリーガムほどのヒットを見込めるのかという危惧がありました。

そこでマスカットの芳醇な匂いに目をつけ、匂いの点でよいものができたら発売しようという話となりました。

だからマスカットガムもブルーベリーと同じように遠くからでも食べている人がわかるほどの匂いを拡散します。

安室奈美恵がCMに出ていたのもヒットの原因でしょう。

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とうとう板ガム100円時代に

平成5年、ロッテは6月から主力板ガム9品をリニューアルして、9枚入り100円としました。

以前からキオスク向けには100円ガムを発売していたこと、フラボノやブラックブラックなどの機能性ガムはすでに100円だったこともあって、定着するだろうという読みです。

平成2年にはパラチノースオリゴ糖を配合しましたが、これに加えて歯垢形成を抑制する、ウーロン茶抽出物「サンウーロン」を配合。

中に入っているガムサヤ紙も1枚だけが他と違うデザインであることも凝っています。

コレクター泣かせではありますが・・・。

12月に発売された「グッデント」は菓子として初めて「特定保健用食品」に指定されたものです。

5年以上の歳月をかけて発売しました。

特定保健用食品とは平成3年から制度化されたもので、体調を整えたり、病気予防の保健効果が期待できる食品。

砂糖を使わずパラチノースやマルチトール配合で「虫歯に安心なガム」の表示がされています。

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機能性ガム一新

平成6年、ロッテは昭和57年から順次発売してきた、フラボノ・ブラックブラック・リラックス・フリーゾーン・ノータイムの効能ガムを新成分を配合するなど機能・品質を高めて、新たに「ハイテクシリーズ」としてリニューアルしました。

効能ガム市場はデンタルケア市場、オーラルケア市場、眠気抑制ドリンク市場、リラクゼーション市場などとともに成長してきましたが、1985年を100とすると10年間に7倍の伸長率が見込まれるほどにまでなりました。

ガム全体の売上も押し上げたのです。

6月には「グリーンガム粒ガム14粒入」を発売。

従来の板ガムに粒タイプをプラスすることで、女性を主軸としたヤング層にミント系ガムへの接触率を高める狙いでした。

「今までの板ガムは72mmという長さでしたが、これを女性が一ロでほおばることはできませんでした。

どうしても半分に折ったり、丸めたりしておりました」(ロッテ広報部)

無理矢理奥へ押し込んだりして、人前ではみっともない。

そこでキャンディー感覚で、一息で口の中に放り込める『粒タイプ』が女性に人気となったのです。

また、「砂糖を使っていません」をうたい文句にしたシュガーレスガム市場の人気も一段と高まっていました。

春、ロッテがシュガーレスガム市場に「フラボノシュガーレスガム」「フルーベリーシュガーレスガム」(14粒入り、100円)で参入したからです。

「フラボノ」、「ブルーベリー」はシュガーレスガムとして世界で初めて粒状に加工した製品です。

甘味料にマルチトールというデンプンを酵素で糖化させた糖アルコールを使い、通常の砂糖を使った製品に比べてカロリーは半分といいます。

メーカーにとっては「砂糖不使用」を強化しすぎて、稼ぎ頭である砂糖使用ガムのイメージを悪くするのも本意でありません。

新聞によれば、高まる消費者の健康志向を背景に膨張し始めたシュガーレスガム市場は、この当時は、ガム市場全体の3%程度を占める程度でした。

小学生が作ったマンゴスチンガム

平成7年、ガムは楽しくて美味しいものというコンセプトを、ロッテは『アミューズメントガム』とネーミングしました。

ロッテがある日、小学生たちに調査すると普段、学習塾に通っている子どもたちはミント系のガムを食べていますが、ハイキングなどの行楽に行くときは「特に食べるガムがないの」という答えが返ってきたそうです。

強いて挙げればブルーベリーなどのフルーツ系ガムを食べていたそう。

つまり日常と非日常では子どもたちはガムを食べ分けているのです。

そこで『アミューズメントガム』としてマスカットだけでなく、果物の女王と呼ばれる「マンゴスチン」がクローズアップされました。

トロピカルな果物なので希少性もありますが、日本では生果でたべる習慣もありません。

果物屋で売っていないのです。

白く豊かな果肉を持つマンゴスチンは昔、世界の7つの海を制覇した大英帝国のビクトリア女王に献上されたことから「クイーン・オブ・フルーツ」と賞賛されています。

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ファッション性のあるスウィーティーガム

マンゴスチンの次はスウィーティーです。

ロッテは11月に柑橘系果実の「スウィーティー」ガムを発売しました。

スウィーティーはグレープフルーツとボメロ(ボンタン)を掛け合わせた新種の果物で、日本でもじわじわと知名度が上がってきている果物です。

一風変わったフルーツ味の板ガムの投入で、市場を活性化させたい考えでした。

スウィーティーはグレープフルーツと比べて皮が緑色で厚みがあり、種はありません。

90年頃から日本にも輸入・販売されるようになりました。

「スウィーティーガム」ではスウィーティーの特徴である、ほどよい酸味とさわやかな香りを再現したといいます。

話題性、新味のあるスウィーティーの味で女子中高生を中心とした若者層に売り込み、初年度30億円の売上げを目指していました。

「ファッション性というキーワードにうまくのせたのがスウィーティーなんです。

グレープフルーツの仲間なんですが、単にグレープフルーツだけでは市場に受け入れられなかったと思います。

『あれ、そういえばなんなの?』という新しさがないと・・・。

フルーツガムの場合は希少性がないとだめなんです。

『いちごガム』なんていっても八百屋さんの方へ行って本物を買ってくればいいわけですから」(ロッテ広報室)

グレープフルーツの仲間のスウィーティーはアメリカ原産ですが、アメリカではなかなか売れなく、イスラエルに行って、名前をスウィーティーと変えてヒットしたといいます。

とにかくフルーツガムは味の希少性、ファッション性が大事。

日本のなしやりんごは確かにおいしいですが、それをフレーバーとして再現してガムにして売っても、手軽に手に入る果物を果たして買うのか疑問が残るといいます。

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シュガーレスガム

シュガーレスガムは欧米に比べて、なかなか定着しにくい商品といわれていました。

国内の菓子メーカーはシュガーレスガム分野で参入・撤退を繰り返してきたのです。

ところがロッテの「ブルーベリーシュガーレス」「フラボノシュガーレス」の2製品は販売地区が限られていた平成6年度でも、合わせて50億円の売上げを達成。

人気の理由は味の良さ。

甘味料はこれまで変遷を経てきましたが、マルチトールなら砂糖使用のガムに比べて味が劣らないといいます。

ロッテのシュガーレスガムへの挑戦は、46年に始まりました。

業界で初めて「シュガーレスガム」と銘打って板ガムを発売しましたが、タイミングが早すぎたのか全く売れずに撤退。

58年にもマルチトールを使った板ガム「ビューティーデント」で再挑戦しますが、既にワーナー・ランバートの「トライデント」が市場に浸透しており、撤退を余儀なくされました。

「たび重なる失敗から社内ではもはやシュガーレスにかける熱は冷め切っていた」(ロッテ広報室)

もう一度挑戦しようとの機運が生まれたのは、マルチトールを使って糖衣状の粒ガムをつくる技術が開発されたのがきっかけです。

このころ、ガム市場の中でシュガーレス製品が占める割合は15%程度に上昇していました。

キシリトールブーム

コンビニのレジ前にはガムが並べられていることが多いですよね。

今、見渡すと『ギシリトール』入りがウケているようで、緑色の「X」の文字が目に飛び込んできます。

血糖値を上げず、歯垢を作らない『キシリトール』の人気は高いですが、この商品名は登録されており、ロッテしか使用できません。

同社は平成9年6月、ロッテ「キシリトール粒14粒入(ライムミント味)」を発売し製品化した先駆け。

平成6年頃から消費者の砂糖離れを受けて、シュガーレスガム製品が相次いで投入され、シェアが15%ほどあったという土壌にようやく花が咲いたようです。

今年も各社からキシリトール入りのガムが相次いで発売されています。

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